おにぎりちゃんのブログ

書きたいことを書いてます。

友人がやばい占い師にぼったくられた話

浅草の伝法院通りにある居酒屋で一杯やってから周辺をブラブラしてたら、
今にもぶっ壊れそうなボロ屋で スゲーちいせぇおばさんがチマッ...と座ってて、もうその時点で怪しさが凄すぎて私は見て見ぬふりをした。
対して、太陽さんは興味を持ったらしく、意気揚々と進んでいくので内心オイ!!と思いつつ ついて行くと、そこはどうやら占い屋らしい。
占い師は 推定130cmくらい 年齢は50代~60代といった容貌で、カズレーザーも着ないだろという赤すぎるコートと、お揃いの赤すぎる帽子を身につけ、赤すぎる布が敷かれた
チョップしたら壊れそうなテーブルと椅子に座っていた。シャアか、連続殺人鬼でない限り好まないであろう量の赤率に私は度肝を抜かれていた。

占いの方法には色々あるが、この人は人相や手相で見るらしい。人相はなかなか珍しいので、ちょっと色めきだった。
我々はよく 中華街にいく。
あそこもよく占いをやっていて、手相占いの相場としては500円でやってくれるところがほとんどだ。
なので、私も太陽さんも500円くらいだろうとタカをくくっていたのだが、
ちいせぇおばさんは 2000円ですと言った。
はっきりと、2000円です。と言った。
東京都の最低賃金で換算するとおよそ2時間分である。

私はその時点で笑ってしまったのだが、
ちいせぇおばさんは更に、「コロナだから電話番号と名前をお聞きしてます」と言った。
最初は何かの聞き間違いかと思ったが、本当に聞いているらしい。
30秒ほど沈黙の時間が流れた。
仮におばさんに陽性の症状が出たりしたら連絡をくれるということなのだろうか?
こんなボロandチビ(テツandトモ)に人が大挙しないことは火を見るより明らかで、
私は意図が分からず固まる。

しかし、太陽さんはそれでもいいと、
やすやすと個人情報を受け渡していた。
私はゾッとした。

このおばさんは実は、反社と繋がりがあり、占い師を装って個人情報を回収しているのでは?とさえ思った。
記入を終えると、おばさんは急に使い捨てのポリ手袋を付け始めた。
「おぉ、ついに」と思ったが、どうやら手指消毒と検温をするらしい。
完全にバイキン扱いされていて、さすがに可哀想で涙を誘う。
すると、ボビ(ボロandチビ)は突然
私に対して、端にズレろと言ってきた。
思わず 「なんだァ...?テメェ....」と国木田独歩になってしまったが、
占う人を真ん中にしないといけないルールがあるらしい。なんだよそのルール。バカか。
中心線を取っているのだろうか。
もしかしたら、太陽さんの心臓を一突きにするつもりなのかもしれないと思い、太陽さんを3cmほど中心からズラしてやった。
これがボビに対するせめてもの抵抗だった。
ちなみに、先に書いておくが、ボビの占い屋には、ボビの椅子はあっても客用の椅子はない。
そして、ボビ自身、小さいせいなのか 鑑定中椅子に座ることはないものの、
小さいボビが手を見やすいよう、こちらも屈む必要があった。
そのため、私と太陽さんは何故か、
膝を曲げて中腰の状態で話を聞き続けなければならない。
だから、この話を読むときは、
全身赤いボビと、チョップしたら割れそうなテーブルと、中腰の状態で両手を突き出す太陽さんfeat 中腰の状態で立っている私 を想像して聞いて欲しい。
いよいよ始まりだ。

ボビ「生年月日、職業、勤続年数、家族構成をおしえて。」
おいおい、面接始まっちまったよ。
そもそもボビは手相と人相専門の占い師。
なのに何故そんなことを聴くのか?
もう先に言っておくが、終わりまで一切この情報は関係がなかったので、本当に反社に売り渡している可能性がある。
太陽さんはポツポツと個人情報を答え、
対する私は 俯くほかなく、目の前で大切な個人情報が湯水の如く溢れ出して行く様を、黙って見ていた。
それをメモしたボビ。これがデスノートだったらワンチャン死ぬなと思っていると、ボビがどこからかライトを取り出した。
どこにしまっていたのか分からぬほどスムーズに取り出したので、占い師よりもマジシャンに転職することを強くオススメしたい。

この時、私は思わぬ面白ポイントに気づいてしまい、すかさず自分の下唇を思い切り噛んだ。


ーライトが、チャリンコのライトだったのだ。
ハンドルの部分につけるタイプのライト。
ボタンを押すと、ぴかーっと光る。
百均で売ってるアレだ。
激安チャリンコライト(※これも当然のように赤)を片手に ボビはじっと手相を見始めるが、私はもう気が気ではない。
なぜならボビが激安チャリンコライトで太陽さんの手のひらをペカペカ照らしているからだ。
落ち着け、落ち着け...。なるべく鼻で呼吸するように心がけながら、心を無にする。

ボビは、こういった。
「マイペースなところもあるけど、意思が強いところもある。」

そんなもん誰だってそうである。
乾いた笑いが出た。
普通、手相を見る占い師さんは、この線があるとうんちゃらで~と教えてくれるが、それさえも無かった。
ボビは一体どこの線をみてそう言ったのだろうか。
ホビ「お金はあまり貯まらないタイプ。莫大なお金を手にするってこともない。でも衣食住には困らない。」

じゃあいいんじゃないですかね?
大体の人間がそういう人生を送っているんだよなぁ...。と思ったが、
ボビに2000円と貴重な個人情報を巻き上げられている現状、確かにお金は貯まらねぇなと謎の納得をしてしまい、溜飲を下げた。

ボビ「他に聞きたいことある?お金のこととか。」
太陽さん「え...うーん...仕事....?」
ボビ「仕事はね、上司にも部下にも好かれてる。」
東大王の速さだった。
一体どこの線の、なにを根拠に読み取ったのかわからないし、質問されてコンマ5秒で答えられるとは いやはや ボビには感服である。
ボビ「他には?なにかある?お金のこととか。」

お金のこと好きすぎるだろ。
そんなもん、ボビから言ってくれなきゃこっちは何も分からない。
この線があると こう、とか あるだろ...と思ったが、ボビはどうやら受け身タイプらしい。

気まずい雰囲気が流れ出すと、突然ボビが耳を見せろと言い始めた。
このセリフ、どう考えても怖すぎる。
瞬きをした次の瞬間には、太陽さんの両耳がゴロリと転がっているかもしれない。
ボビは 見せろと宣った割にはサクッと耳を見て、
「あ~...お父さんがちょっと元気ないかも」と言った。

いよいよ私は堪えきれず、噴き出した。
ボビにはバレていない。
クシャミを装い、「ンァー...!」と演技した私の努力も虚しく、空を切るばかり。

太陽さんは、「お父さんかー(棒読み)」と、もう半ばどうでもよくなっているようであった。
そりゃあそうだ。
2000円払ったのに、普遍的なことしか言われず、耳を見せたら お父さんがちょっと元気ないかもと言い出す。
そもそも、耳のどこをみて お父さんがちょっと元気ないとわかるんだろうか。
"お父さんがちょっと元気ない人の耳の形"とかそういうのがあるんだろうか。
私は 太陽さんの耳とボビが喋ったとしか思えないのだ。

「オトーサンゲンキナイカモ!!」
そんなイカれたクソアニメみたいな光景が見えているのであれば、十中八九違法な薬に手を出していると言わざるを得ない。
ボビは直ちに出頭するべきである。

ボビ「他は?何か聞きたいことある?お金のこととか」
太陽「あ、もういいです。」
太陽さんは ニヘラニヘラ笑いながら、サッと電光石火の速さで手をしまった。
そして、テヘヘ...と笑いながら、「あっそうだお金ですね...お金お金...wふひひ」と財布から2000円を出し、ボビに手渡す。

先述した通り、我々の眼前にはチョップしたら壊れそうなテーブルしかなく、レジのような高度な文明機器など存在しないので、
どこにお金しまうんだろう?とボビを観察していたら、ボビは グジュ....と1000円札を握りつぶし、拳の中へとしまっていた。
ボビには、レジなど要らないのだろう。
ボビの拳こそ、レジであり、最大の武器なのだ。
その事実に気づいた瞬間、私は怖くなり
会釈だけしてその場から立ち去った。
怖すぎて後ろを振り返る勇気はなかった。

太陽さんは「私なんであんなのにお金払っちゃったんだろう。止めてよ。」とボヤいていた。
しばらく類を見ないまでに凹んでいたが、
突然「恵まれない人に寄付したってことにする」と切り替えており、その精神があるなら
たとえお父さんがちょっと元気なくなっても、お金があんまり貯まらなくても大丈夫だろうと思った。